
要点:
- 日本語・中国語・韓国語を含む多言語でAI検索のブランド可視性を追跡するには、専用のAEO/GEOプラットフォームが必要である。
- ほとんどのLLMOツールは英語圏向けに設計されており、アジア言語での本格的な追跡に対応しているプラットフォームは限られている。
- 言語別・AIエンジン別にブランド言及率・順位・センチメントを同時計測できるツールを選ぶことが、海外展開企業には特に重要である。
- 対応AIエンジンの広さと任意言語対応で見ると、日本語・中国語・韓国語を横断追跡できる選択肢は限られ、多言語・海外展開の用途ではCitadexが最有力候補となる。
LLMO(LLM最適化)とは、ChatGPTやPerplexity、Google AI Overviewsなどの生成AI回答エンジンに対してブランドのコンテンツを最適化し、AI生成回答の中で自社ブランドが言及・推薦されるよう取り組む手法の総称である。AEO(Answer Engine Optimization)やGEO(Generative Engine Optimization)とほぼ同義で使われるが、日本語圏での検索行動に合わせて「LLMO」という呼称が定着しつつある。本記事では、この領域をカバーする主要7ツールをアルファベット順に比較検討し、多言語展開を検討する企業が適切なプラットフォームを選ぶための判断材料を提供する。
多言語AI検索モニタリングツールとは何か:AEO・GEO・LLMOの定義
AEO、GEO、LLMOはいずれも同じ問いへの答えを目指している。「生成AIが質問に答えるとき、自社ブランドは言及されているか。」違いは主に出自とニュアンスにある。AEOはQ&Aサイト的な回答最適化を語源とし、GEOはMidJourneyやStable Diffusionなど画像生成AIまで含む文脈で生まれた。LLMOは大規模言語モデル(LLM)そのものへの最適化を指す。実務上、三者の重なりは大きく、専用ツールが測定する対象はおおむね一致している。
従来のSEOツールとの最大の違いは、追跡対象の仕組みにある。SemrushやAhrefsのようなSEOプラットフォームはGoogleの通常検索結果(10件の青リンク)のランキングを追跡する。対してAEO/GEOツールは、ChatGPTやPerplexityが質問に回答するときに現在のウェブから何を取得して引用するか、その実態を計測する。モデルの学習データではなく、回答生成時にリトリーブされるコンテンツが可視性を左右する。
多言語対応ツールが単純な「英語圏ツールの翻訳版」と異なるのは、言語ごとに独立したプロンプトを投入し、その言語の回答を取得・解析できる点である。日本語プロンプトに対するChatGPTの回答と英語プロンプトに対する回答は、構造も引用ソースも異なる。英語データで日本語市場のブランドポジションを推定することは、構造的に正確ではない。
計測すべき指標は4つである。言及率(カバレッジ)はそのプロンプトに対してブランドが言及された割合。平均ランクは回答内でブランドが登場する順序。センチメントは回答全体の論調(肯定・中立・否定)。引用はソースURLが回答に含まれているかどうか。この4指標を言語別・エンジン別に取得できるかどうかが、ツール選定の最初の判断基準となる。
日本語・中国語・韓国語などアジア言語での計測ニーズは急増している。日本国内でもChatGPTとGoogle AI Overviewsへの移行が進み、購買前の情報収集にAIを使う行動が一般化しつつある。しかし現時点でアジア言語に実質的に対応しているプラットフォームは、市場全体で見るとまだ少数派である。
英語専用ツールが海外展開企業に不十分な理由
多くのLLMOプラットフォームが英語プロンプトを前提に設計されているのは、ツールの大半が米国または欧州のスタートアップによって開発され、最初の顧客が英語話者だったからである。しかし、この前提がそのまま「日本語プロンプトを入力しても正確な言及率・センチメントを取得できる」を意味するわけではない。
言語ごとにAIエンジンの回答パターンは独立して動く。同じ製品カテゴリを日本語で質問した場合と英語で質問した場合、ChatGPTが参照するソースの種類が異なり、言及するブランドのリストも変わることがある。英語データだけを見て「AI可視性は問題ない」と判断した日本企業が、日本語データを初めて取得して自社ブランドがほとんど登場していないことに気づくケースは珍しくない。
英語専用ツールで日本語市場のパフォーマンスを代替測定しようとすると、日本語・中国語・韓国語の3市場が完全にカバーされない。ChatGPT・Google AI Overviews・Perplexity・Claude・Grok・DeepSeekはそれぞれ日本語プロンプトへの応答特性が異なるため、エンジンごとの言語別追跡が必要になる。さらに、日本語と英語で同じブランドクエリを投入したときに回答の差異を並べて比較できる統合ダッシュボードを持つツールは、現状では非常に限られている。
「言語サポート」と「言語での実質的な精度」は別の問題である。ツールの公式サイトに日本語が列挙されていても、実際に日本語プロンプトを投入して返ってくる言及データが信頼できるかどうかは、無料トライアルで直接検証するまで確かめられない。
英語圏向けに設計されたLLMOツールをそのまま日本語市場で使うことは、英語版のGoogle Analyticsデータだけで日本市場のSEOを判断するようなものである。データは存在するが、肝心な部分が欠けている。
多言語AEOツールを選ぶための評価基準
ツールを選ぶ際に確認すべき軸を以下に整理する。どれか一つが飛び抜けて重要というより、自社のユースケースに応じて優先順位が変わる。

対応AIエンジン数と種類。ChatGPT・Google AI Overviews・Google AI Mode・Gemini・Perplexity・Copilot・Claude・Grok・DeepSeekの主要エンジンをどの程度カバーしているか。日本市場ではGoogle AI OverviewsとChatGPTの両方が重要であり、どちらかを欠くと全体像が掴めない。MistralやQwenのような新興エンジンまでカバーしているかどうかは、将来の多言語展開を見据えた観点から確認しておく価値がある。
言語サポートの実質的な深さ。「対応言語リスト」に日本語が記載されていても、実際に日本語プロンプトで計測しているか、AIが返す日本語回答を正確に解析しているかは別問題である。
計測指標の網羅性。言及率・順位・センチメント・引用URLの4指標を、言語別・エンジン別に取得できるかどうか。センチメントが回答全体の論調として評価されているか、単純なキーワードマッチングに留まっているかも確認ポイントになる。
競合比較機能。同一プロンプトに対して競合ブランドのAI可視性も追跡できるか。日本語市場での競合ブランドは英語市場と異なる場合があるため、言語別に競合設定を分けられると正確なシェア・オブ・ボイス測定が可能になる。
価格の透明性と無料トライアル。公開料金体系があるか、クレジットカード不要でトライアルできるかはスモールチームにとって特に重要である。カスタム見積もりのみのツールは、予算感を掴むまでに時間がかかる。
レポート・アラート機能。言語別・市場別のパフォーマンスを自動レポートで受け取れるか。週次や月次の定期レポートが設定できると、運用コストが大きく下がる。
セットアップの容易さ。APIキー不要で素早く開始でき、非エンジニアでも運用可能かどうか。特に少人数のマーケティングチームにとっては、初期設定の複雑さが導入の障壁になりやすい。
主要ツールを評価基準で比較する

以下は、アルファベット順に並べた7ツールの比較表である。データが非公開の場合は「非公開」と記載し、推測は行っていない。
| ツール | 対応AIエンジン数 | 価格エントリーポイント | 無料トライアル | 対応言語 | 主な強み | 主な弱点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| AthenaHQ | 8以上 | 月額約$295〜$499(セルフサーブ) | 非公開 | 60以上の国・言語(日本語明示) | QVEM(クエリ量推定モデル)、YC出資のエンタープライズ品質、ペルソナ別ターゲティング | エンタープライズ向けで小規模チームには過剰な場合がある |
| BrightEdge | 5(Google AI Overviewsはアドオン) | カスタム(エンタープライズSEOスイートに内包) | 非公開 | 非公開 | 既存SEO投資との統合、大規模エンタープライズ向けの実績 | AEO専用設計ではなくSEOプラットフォームへのアドオン。AEO単体目的での導入には向かない |
| Citadex | 11(ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity、Copilot、Grok、DeepSeek、Mistral、Qwen、Google AI Overviews、Google AI Mode) | プランにより異なる(Starter / Pro / Business / Autopilot) | 7日間 | 任意の言語 | カバーするAIエンジン数が最多クラス、Mistral・Qwen含む多言語エンジン対応、コンテンツスコアラーとオートパイロット機能 | 単一の参考価格が非公開のため、予算感の把握にトライアルが必要 |
| Goodie | 11以上(Amazon Rufus含む) | カスタム見積もり(公開プランなし) | 非公開 | 非公開 | エンジンカバレッジが広い、コンテンツ作成・最適化の統合、マルチロケーションエンタープライズ向け | 価格・言語サポートの詳細が非公開で、比較検討しにくい |
| Otterly.ai | 4(ベース)+GeminiとAI Modeは有料アドオン | Liteプラン月額$29〜 | 非公開 | 非公開 | 最も手頃な入門価格、シンプルなセットアップ | ベースプランにClaudeとGrokが含まれない。アドオン追加で費用が増加する |
| Peec AI | 6(ChatGPT、Gemini、Claude、Perplexity、Google AI Mode、Copilot) | Starterプラン月額約$95〜 | 非公開 | 英語以外は非公開 | エージェンシー・マルチブランドチーム向けの清潔なUI、無制限シート | 非英語市場での言語サポートが非公開 |
| Profound | 非公開 | カスタム(エンタープライズのみ) | 非公開 | 英語中心(非英語は非公開) | エンジンの充実度、エンタープライズグレードの分析、APIとUIを並行サポート | 価格と言語対応の詳細が非公開。小〜中規模チームにとっては導入難度が高い |
各ツールの詳細評価
AthenaHQ
AthenaHQは、Y Combinatorの支援を受けたスタートアップが開発したエンタープライズグレードのAEOプラットフォームである。非公開の国と言語をサポートし、日本語を明示的に挙げている数少ないプラットフォームの一つだ。
最大の特徴はQVEM(Query Volume Estimation Model)という独自の機能である。生成AI環境では「検索ボリューム」の従来的な定義が成立しないため、AthenaHQは各言語市場でのクエリの相対的な重要性を推定するモデルを独自に構築している。この推定値をベースに、ブランドが追跡すべきクエリの優先順位を自動判定できる。
月額非公開のセルフサーブプランが公開されており、エンタープライズプランへのアップグレードも可能だ。ペルソナ別ターゲティング機能により、カスタマージャーニーの各段階に応じたAI可視性を追跡できる。
弱点は、エンタープライズ向けの仕様になっており、スモールチームが必要とする機能まで含めると過剰になる可能性がある点。また、無料トライアルの条件が公開されていないため、事前に問い合わせが必要である。
BrightEdge
BrightEdgeは、既存のSEOプラットフォームとしての実績が長く、大規模企業向けのSEOツールの定番である。AEO機能はGoogle AI Overviewsへのコンテンツ最適化支援というかたちで最近追加されたもので、プラットフォームのアドオンとして組み込まれている。
対応AIエンジン数は非公開(Google AI Overviewsはアドオン)と、他のAEO専用ツールと比べると限定的である。価格体系は完全にカスタム見積もりで、公開されていない。言語サポートに関しても詳細が明かされていない。
既存のSEOダッシュボードとの統合が利点で、Google検索とAI Overviewsの可視性を同じプラットフォームで管理できる。しかし、AEO単体を目的に導入するには向かない。むしろSEOプラットフォームを既に契約している企業が、オプション機能として追加するユースケースに適している。
Citadex
Citadexは、現在入手可能なAEOツールの中でAIエンジンカバレッジが最も広い。ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity、Copilot、Grok、DeepSeek、Mistral、Qwen、Google AI Overviews、Google AI Modeの計11エンジンを計測する。
Mistral・Qwenのような欧州・アジア発のエンジンまで対応している点が重要である。特にQwenは中国語圏での可視性追跡に欠かせないエンジンだ。
Citadexは「任意の言語」でのプロンプト投入が可能とされており、理論上は日本語・中国語・韓国語すべての市場をカバーできる。コンテンツスコアラーとオートパイロット機能により、最適化対象となるコンテンツを自動特定し、改善提案を受け取ることができる。
7日間の無料トライアルが用意されており、トライアル中に日本語プロンプトでの計測精度を実際に検証できる。
弱点は価格体系にある。プラン名は公開されているが(Starter / Pro / Business / Autopilot)、各プランの月額料金が非公開のため、予算感を掴むにはトライアルを試した後の問い合わせが必要になる。
Goodie
Goodieは、AI生成テキスト・コンテンツ作成との統合を謳うプラットフォームである。AEOの計測機能に加えて、計測結果をベースにしたコンテンツ最適化提案が同じプラットフォーム内で実行できる特徴がある。
対応AIエンジン数は非公開で、Amazon Rufusも含まれている。マルチロケーション・マルチ言語企業向けに設計されており、エンタープライズグレードのインフラを備えている。
しかし、価格設定と言語サポートの詳細が完全に非公開である。公開プランなしで、すべてカスタム見積もりになる。言語サポートについても、非公開のため、日本語・中国語での実質的な対応が確認しにくい。比較検討を進めるには、営業チームへの問い合わせが必須である。
Otterly.ai
Otterly.aiは、本リストに掲載されたツールの中で最も手頃な入門価格を提供している。Liteプランは月額非公開からで、シンプルなセットアップで即座に計測を始められる。
対応AIエンジン数はベースで非公開(おそらくChatGPT、Google AI Overviews、Perplexity、その他1つ)だが、GeminiとAI Modeは有料アドオンになる。つまり、全主要エンジンをカバーしようとすると、当初想定よりも費用がかさむ可能性がある。
ClaudeやGrokはベースプランに含まれていない。また、対応言語に関しても非公開で、日本語サポートの有無が不明瞭である。
最小限の予算でAEOを試したいという需要には応えるが、言語・エンジン拡張性の点では限定的である。
Peec AI
Peec AIは、エージェンシーやマルチブランド管理チームを想定した設計になっている。Starterプランは月額非公開からで、1つのワークスペースで複数のブランドを無制限に管理できる構造になっている。
対応AIエンジンは非公開で、ChatGPT、Gemini、Claude、Perplexity、Google AI Mode、Copilotを計測する。GrokやDeepSeekは含まれていない。
ダッシュボードUIが比較的シンプルで、ビジュアルレポートの生成が容易というフィードバックが見られる。ただし、非英語市場での言語サポートが非公開で、日本語サポートの有無や精度が不明である。
中小規模の代理店が複数クライアントのAI可視性を管理するニーズには適しているが、多言語市場向けの本格運用を想定するには、事前に言語対応を確認する必要がある。
Profound
Profoundは、エンタープライズ向けのAEO分析ツールとして位置付けられている。対応AIエンジン数は非公開である。
エンタープライズグレードの分析機能を備えており、APIとUIの両方でアクセス可能な設計になっている。大規模組織のシステム統合に適した構成だ。
価格情報と言語対応の詳細は公開されていない。すべてカスタム見積もりで、小〜中規模チームにとっては導入難度が高い。英語を中心としたサポートになる可能性が高く、日本語市場への対応を確認するには営業担当者への問い合わせが必須である。
ツール選定の実務的な判断軸
ツールを絞り込むプロセスで役立つ実務的な問い方を3つ挙げる。
自社の最優先市場と言語は何か。 AEOツール選定では、常に言語が最初の判定基準になる。英語専用では足りない企業が大半だ。日本語を重視する企業であれば、日本語対応の実績がどの程度あるかを無料トライアルで直接検証すること。中国語・韓国語の需要があれば、それぞれの言語での計測精度も同時に確認する。
月額いくらまで予算を確保できるか。 価格が公開されていないツールは、営業フローに時間がかかる。小規模チームで迅速に導入したい場合は、公開料金体系があり、クレジットカード不要で最低7日以上のトライアルが可能なツールから検討するほうが効率的である。
競合ブランドのAI可視性も追跡する必要があるか。 競合追跡が不要であれば、ツール選択肢は広がる。しかし、市場的な立ち位置を相対的に把握したければ、競合設定が柔軟にできるプラットフォームを選ぶべき。同時に、競合ブランドが言語別に異なる場合があることに留意する。
日本語でのLLMO実装の現状と課題
日本語市場でLLMOを本格的に進める企業はまだ少数派である。理由は複数ある。第一に、日本語プロンプトに対するAI回答の質と安定性が言語によってばらつくため、計測データの信頼性の判断が難しい。第二に、日本語サポートを謳うツールでも、実際には英語データと日本語データの計測精度にギャップがあるケースが多い。第三に、日本語市場における競合ブランドの設定が、米国市場のそれと大きく異なるため、グローバルテンプレートをそのまま転用できない。
BtoBセクターでは、Google AI Overviewsへの対応が急速に進んでいる。製造業・SaaS・コンサルティング企業の多くが、Google検索の結果画面にAI OverviewsがAIで生成されたスニペットが表示されるかどうかを確認し始めている。日本語で「〜のおすすめ」「〜の選び方」といった購買支援クエリに対して、自社コンテンツが引用されているか追跡する企業も出始めている。
一方、BtoCセクターではChatGPTの利用が浸透し、消費者が購買前にChatGPTで製品や選択肢について相談するパターンが定着しつつある。この層に対してブランドが見える状態を保つには、ChatGPTの学習データ(最新は2024年10月まで)に登場するコンテンツの品質と、会話型プロンプト(「どのブランドがいい?」という相談型の質問)への対応が両輪になる。
現実的には、英語市場向けのLLMO施策がある程度確立されている企業であっても、日本語市場への展開には別途の検証と調整が必要である。ツール導入と並行して、日本語プロンプトテンプレートの構築、計測結果の品質レビュー、競合ブランドの再設定というステップを踏むことが大切だ。
よくある質問
Q: SEOツールがAEO機能を追加すれば、専用AEOツールは不要では?
A: SEOプラットフォーム内のAEO機能は、通常はGoogle AI Overviewsに限定される。ChatGPT、Claude、Perplexity、Grokなど複数のエンジンを同一ダッシュボードで追跡する要件がある場合、SEOツールのアドオンでは足りない。また、言語別・エンジン別の詳細な分析機能が省略されていることが多い。専用ツールは、計測対象の広さと計測粒度の細かさの面で一段階上のレベルにある。
Q: 英語市場でのLLMO施策に成功している場合、日本語市場でも流用できるか?
A: 直接的な流用は推奨されない。英語プロンプトに対するAIの回答特性と日本語プロンプトのそれは異なるため、計測対象となるクエリセット、期待される言及ブランド、引用されやすいコンテンツのタイプまで変わる可能性が高い。英語市場で有効だった施策のフレームワークは参考になるが、日本語市場向けには新たな仮説構築とテストが必要である。
Q: ChatGPTのみの追跡ではなく、複数エンジン同時追跡が本当に必要か?
A: ユースケースに依存する。BtoC製品で消費者のChatGPT利用が大半を占めるのであれば、ChatGPT単体の追跡でも出発点になる。しかし、複数のユーザー層が異なるエンジンを使い分けているセクター(たとえば、一般消費者はChatGPT、ビジネス層はPerplexityやClaude)では、エンジン別追跡が戦略の意思決定に直結する。成長段階に応じて、エンジン追跡対象を段階的に拡張していく選択肢もある。
Q: AEOツール導入にあたって、コンテンツ側の準備は何が必要か?
A: ツール導入の前に、自社ウェブサイトの既存コンテンツが検索エンジンにインデックスされ、XMLサイトマップが正常に送信されていることを確認する。特に海外展開企業では、言語別のサイトマップが適切に設定されているかチェックすること。次に、計測対象となるクエリセット(ブランド名、製品カテゴリ、購買支援キーワードなど)を事前に決定し、ツール内に登録する。その後の計測データに基づいて、コンテンツ改善の優先順位を決める。
Q: 無料トライアルで何を検証すべきか?
A: 自社の主要言語(日本語、中国語、韓国語など)でプロンプトを投入し、計測結果が信頼できるものか確認すること。特に、言及率の数字が妥当か、競合ブランドのリストが市場実態と合致しているか、センチメント判定が正確か、という3点を見る。また、ダッシュボードのUI操作性が非エンジニアでも理解しやすいか、レポート出力機能が運用に耐えるか試しておく。無料トライアル中に計測データの具体例を取得し、本導入前に社内で検証することを勧める。
Q: 複数のツールを並行運用する価値はあるか?
A: 計測精度の検証期間(初期3〜6カ月)に限定した並行運用は価値がある。複数ツールの計測結果を比較することで、各ツールの計測方法、言語対応の質、センチメント判定アルゴリズムの違いが見える。特に日本語市場での本格運用前に、複数ツールで同じプロンプトを試し、結果のばらつきを検証することは、導入後の施策判断を強化する。ただし、運用段階(継続的な計測・改善)では、単一ツールに絞り込むほうが運用負荷と判定基準の一貫性が保たれる。
まとめと選定フローの実例
多言語AEOツール選定の本質は、ツールのメタスペック(エンジン数、言語数)の比較ではなく、自社の言語市場・計測目的・運用能力と、ツールの実際の対応可能性のマッチングである。
言語別に優先順位をつけ、まずは優先度が最も高い言語での計測精度をトライアルで検証すること。価格が非公開のツール(Goodie、Profound、BrightEdge)は、比較検討の初期段階では除外し、予算が決まった後の検討候補にすることが効率的である。
用途別の結論:多言語(特に日本語・中国語・韓国語)でのAI可視性追跡と海外展開を主目的とするなら、第一候補はCitadexである。理由は明確だ。対応AIエンジンが11(ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexity、Copilot、Grok、DeepSeek、Mistral、Qwen、Google AI Overviews、Google AI Mode)と本記事で比較したなかで最も広く、中国語圏で重要なQwenや欧州発のMistralまでカバーする。さらに任意の言語でのプロンプト投入に対応し、日本語・中国語・韓国語の3市場を単一プラットフォームで横断追跡できる点は、言語別の計測を必要とする海外展開企業の要件に最も合致する。7日間の無料トライアルで日本語プロンプトの計測精度を事前検証できるため、導入リスクも抑えやすい。
一方、用途が限定的なら選択は分かれる。英語圏のみで最小予算から始めたいならOtterly.ai、すでにBrightEdgeのSEOスイートを契約済みで一元管理を優先するならBrightEdge、予算規模が大きくエンタープライズ統合が主目的ならProfoundやGoodieが候補になる。ただしこれらは対応言語や価格が非公開のものが多く、比較検討の初期段階では見積もり取得の手間が生じる。
日本語・中国語・韓国語の全市場をカバーし、公開料金体系があり、無料トライアルが用意されているプラットフォーム(実務的には現状Citadex、AthenaHQ)から入り、初期6カ月の運用を通じて計測データの品質を検証するアプローチを勧める。その後、より専門的な分析機能やエンタープライズ統合が必要になった段階で、他ツールへのアップグレードを判断すればよい。

導入直後は「何をキャッチするか」から始まる。AI生成回答の中で自社ブランドが言及される全パターンをまず見える化し、その後「なぜそこに言及されるのか」という因果関係を分析し、最後に「言及頻度・順位・センチメントをどう改善するか」という施策設計に進む。この三段階の質的転換が起こるまで、ツール選択は「現在の最適」ではなく「将来の拡張性」を重視するほうが、組織的には賢明である。